2005年09月09日

たまり場で「川ガキ」を復活させるのだ

今日は電車の中で『ソリューション・ バンク』(長谷川啓三、金子書房、2005)を読む。

『ソリューション・バンク』と聞いて、「ソンシーイーオー」率いる某有名大企業のことを連想される方もいるかもしれないが、 そちらとは別に何の関係もない。

「ソリューション」とは「解決策」のことである。つまり『ソリューション・バンク』というのは解決策をいろいろ集めた「解決銀行」 という意味になる。

その中にこんな話が出ていた。

ある共働きの夫婦の話。共働きでふだん平日の昼間は家には不在がちなせいで、 家の駐車場が近所の子どもたちの格好の遊び場になっていた。 子どもたちはお菓子やおもちゃのゴミをそこらじゅうに撒き散らして片付けもせずに帰ってしまうので、 休日はいつもその掃除をしなければならなかった。

どうすればよいかと考えた結果、ある解決策を思いついた。駐車場を散らかしっぱなしのままにしてダンボールを置き、 こんな貼り紙をしたのである。

「ゴミはこの中よ!たくさんいれてね!」

そうすると、子どもたちはゴミをそこに入れるようになり、しまいにはまわりのゴミも片付けてそこに入れるようになった。 そこでそのダンボールにこう書いた。

「きれいになったね、ありがとう!」

うーん、見事な心理指導である。

ふと、近所にある家の前にこんな看板を立てている家があるのを思い出した。

「いつも糞の掃除ありがとうございます。」

これもまた見事な誘導である。きちんとメッセージを届けるべき相手に反発を呼び起こすことなく届けている。

たいていの場合こういう時、ついつい感情的になってしまい「相手にメッセージを届ける」ことよりも「私の主張を述べる」 ということに集中してしまい、かえって反発を呼び起こして問題解決どころか余計にこじらせてしまうことになりがちである。


私は時間がある時、多摩川を散歩する。

遠くに青梅や五日市の山並みなどを見つつ、川の流れや河原の植物の繁茂している様を見ていると、私の頭の中には「ほっこり幸せ物質」 のようなものがじわじわと分泌されてきて、なんとも言われぬ恍惚状態になってしまうのである。

そうなると私の脳内ではいろんな雑念が次から次へと湧いてくる。

その多くはたいていどうでもいいくだらないことばかりであったりするのだが、 ごくまれにその中にたいへん優れた洞察に満ちた(気がする)卓見のようなものがきらりと光ったりすることがある。

しかし、くだらない雑念でいっぱいの私の頭から何ゆえに突然、 そのようなきらりと光る卓見のようなものがひねり出されてくるのだろうか。なにしろ私の頭の中はいつも 「ハトのくちばしに付いてるひょうたんみたいのはナンだろう?」とか「多摩川って英語にすると“Tama river”だよな。“たまり場” 。プッ」とか、ホントにくだらないことでいっぱいなのである。

なのでそのような卓見の類(たぐい)というのは、私の頭がくだらない雑念にどっぷりと浸かって意識が朦朧としてきた頃に、 ふっと生まれた意識の空白のようなところに、うっかりどこかから受信してしまったものであると私は思っている。

自然の中に身を置いているとそのような瞬間がしばしばある。

話がつい脱線してしまったが、いつもそうして恍惚としながら多摩川を散歩しているときにふと目に入る看板がある。 そこにはこう書かれている。

「危険ですので川に入らないでください」

うむ。簡潔で分かりやすいし、言っている内容もまったく正しいようにも見える。だがしかし、これではいけない。

このメッセージを書いた人は「言葉の意味がわかれば話は通じる」と思っていらっしゃるようだが、 それは人間の心の働きというものを考えに入れていない。水難事故を減らすためにと思って書かれたのであろうが、 この書き方では事故を減らすどころか増やすことにしかつながらない。

まずこのメッセージは「誰に向けて言っているものであるか」ということである。

「川へ入らない人」に向けて言っているのではないことは当然である。これは「川へ入ろうとしている人」に向かって言っているのである。

「入るな」と書かれているにもかかわらず、「入ろう」とする人に向けて書かれているのである。

「入るな」と書かれているにもかかわらず「入ろう」とする人は、そのメッセージを否定して自分の行動を正当化して行為に及ぶ。

つまり「危険ですので川に入らないでください」というメッセージに対しては、「別に危険じゃないから川に入って遊ぶ!」 と言い張ることになる。このメッセージを読んで川へ入る人はことごとく「別に危なくないって、平気平気。」と言って川に入るのである。

つまりこのメッセージは「川へ入ろうとする人」に対して、油断することを促すことしか役割を果たしていない。

もし水難事故を減らすために書くのであれば、たとえば「危険ですので川へ入るときは十分気をつけてください」と書くか、 あるいはただ単純に「川へ入るな!」と書くべきである。

しかし、絶滅危惧種である「川ガキ」 の復活を心から願う私としては、やんちゃなガキ活発なお子様たちにはどんどん川へ入って遊んでいただきたいと思っている。

なので私ならこう書く。

「子供たちが川で遊びます。大人は邪魔をしないように!」

こう書くと、意地の悪いクチうるさいオヤジが様子を見にやってくるので、こちらも安心なのである。

posted by RYO at 21:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑念 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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